小冊子『サブカルチャーとしてのイスラム国』(先行版)の音楽対談概要

音楽対談
音楽になりえない歌――イスラム国のナシードについて
ピアノナイク × 志津A

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対談の小見出し

音楽とプロパガンダ
アニメ作品における音楽の効果
アラブ音楽としてのナシード
特徴1――アカペラ
特徴2――重厚なコーラス
『スカボロー・フェア』との比較
西洋音楽との比較
アブー・アリのナシード
特徴3――アウフタクトの少なさ
特徴4――平板な歌い方
特徴5――音声加工
特徴6――効果音
ラップとの比較――デニス・カスパートの事例
結論

 現在セカンドアフターではイスラム国をテーマとした小冊子を制作中ですが、諸々の事情により、完成がかなり先になる(2018年以降)ので、先行版という形で、音楽対談のみ公開することにします。

 セカンドアフターのイスラム国特集号『サブカルチャーとしてのイスラム国』は、2015年初頭に起きた日本人拘束事件を受けて企画したものであり、サブカルチャーという観点からイスラム国を問題にする――特にそのプロパガンダ動画を分析する――ことを主目的としています。

 この音楽対談では、プロパガンダ動画に用いられているナシード(賛美歌という意味)と呼ばれる歌を分析対象としています。歌詞の側面からではなく、音楽の側面から分析をほどこし、他ジャンルの音楽と比較対照することで、ナシードの特徴を明確化しています。

 対談の冒頭でも示したことですが、なぜイスラム国に関心を寄せるのかと言えば、それは現在の日本の状況を相対化したいためです。難民の大量流入、大規模なテロ事件、いわゆるイスラモフォビア(イスラム恐怖症)。西洋において、社会的・政治的次元で、現在の中心的な課題とでも呼べるこうした諸々の問題に対して、どこか遠く離れているように見える日本の状況、その距離感を明示したいがためです。

 これまで同人誌『セカンドアフター』では、アニメ、マンガ、ゲームといったサブカルチャーを中心的に取り上げて、それが社会的・政治的次元(特に東日本大震災)とどのように関わるのか(あるいは関わらないのか)ということを問題にしてきました。それは、単に日本の消費社会的現状(いわゆるガラパゴス的現状)を否定的に捉えるというのではなく、自分たちの立っている場所、自分たちの生きている場所を明確に意識したいがためです。

 サブカルチャーが社会的・政治的な次元からどこか距離を取るものとしてあるとすれば、まさにその距離感のうちに日本のリアリティが存在するのであり、このことを強く実感するために、国際的な諸問題に積極的に目を向けるべきだと考えています。(志津A)


音楽対談で言及した主なナシードのリンク

イスラム国のナシード
Ummati Qad Laha Fajrun
https://www.youtube.com/watch?v=MFR7eki-5Ik

Salil Sawarim
https://www.youtube.com/watch?v=ZQoJvI8XUa0

Qareeban Qareeban
https://www.youtube.com/watch?v=MSNn2PXrXgM

アブー・アリのナシード
Qom
https://www.youtube.com/watch?v=LxubQBkLWyY

Hebbit Kerrih
https://www.youtube.com/watch?v=9xEzmdzPn4g